研究内容
地域住民に対する健康意識向上方法の探索
◎実施組織
・岡山大学薬学部地域創生在宅薬学講座:統括・実務実施
・岡山大学薬学部臨床基礎統合薬学分野:研究デザインの検討、学生のデータ解析支援
・アイ薬局:実証協力・地域連携強化
・岡山県総社市:特定健康診査のデータ提供のご協力
近年、生活習慣病や高齢化が進行する中、地域住民の健康意識向上と行動変容が予防的医療の鍵となっている。しかし、地域ごとの環境差や医療アクセスの違いから、住民の健康リテラシーや積極的な健康行動にはバラつきが存在する。健康意識向上に寄与する有効な介入方法を多角的に検証し、その地域特性に適した戦略を明らかにすることが、地域完結型ヘルスケア体制の確立、健康格差の是正、ひいては地域包括ケアの実現に不可欠である。
本研究は、各種介入や調査を通じて、持続可能かつ効果的な健康意識向上手法の開発を目指す。
1.地域における健康教室の実施による、地域住民の健康意識向上に関する評価
将来展望:
住民参加型健康教室を継続展開し、健康行動や生活習慣の改善度を客観的に評価する。
将来的には教室で得た知見から、地域特性に合わせた効果的なプログラムのモデル化と、自治体主導による持続運営体制の構築を目指す。
2.地域住民に対する自己採血検査と健康指導アプリを用いた疾患の発症抑制に関する研究
将来展望:
デジタル技術と自己採血検査を組み合わせた個別介入により、疾病発症前の早期発見・コントロールを目指す。将来的には遠隔地や医療資源の限られた地域にも普及し、セルフケア推進と健康格差解消につなげる。
3.地域における調剤薬局の役割及び簡易血液測定に関するアンケート調査
将来展望:
調剤薬局が地域健康拠点として機能する課題と可能性を住民の意識調査から検証。今後は簡易測定を活用した予防医療の役割強化や、多職種連携拠点としての地域薬局モデルの構築を提言する。
4.薬剤師による在宅医療の質的調査
将来展望:
薬剤師による在宅医療の実践現場に焦点をあて、課題や成功事例を質的に評価する。将来は多職種連携やICTを活用した在宅医療支援の高度化、安心して住み続けられる地域ケア体制の発展に資する。
在宅医療における大規模データベースを用いた解析
◎実施組織
・岡山大学薬学部地域創生在宅薬学講座:統括・実務実施
・岡山大学薬学部臨床基礎統合薬学分野:学生のデータ解析
・アイ薬局:実証協力・地域連携強化
高齢化や多疾患併存が進む中、在宅医療の質向上・最適化は急務となっている。しかし、在宅医療の全体像や地域間格差、災害時への対応力については、現場ごとにばらつきが多く、体系的なエビデンスが不足している。全国規模の診療報酬・レセプト等の大規模データベースの活用により、医薬品使用実態や疾患構成、薬剤関連課題を客観的に把握することで、現状の可視化と課題発見が可能となる。
本研究は、リアルワールドデータ解析を通じて、地域包括ケアの質的向上や災害時の医療継続体制の整備、薬剤適正使用政策への実証的知見の提供を目的とする。
1.在宅医療で使用される医薬品の地域差分析
将来展望:
医薬品使用の地域差を定量的に把握し、不均衡是正や教育介入の指針とする。今後はデータを活用した標準化モデルの提案や、地域特性に応じた薬剤適正使用推進策の開発へつなげる。
2.災害時にむけた慢性疾患治療薬の地域分布評価
将来展望:
慢性疾患治療薬の在庫・分布状況を可視化し、災害時に備えた供給体制や優先配布リスト作成へ応用する。将来は行政・薬局・医療機関が連携した迅速な医薬品確保・調整体制の構築に結びつける。
3.薬剤関連課題の分析・評価
将来展望:
多剤併用や副作用リスク、服薬アドヒアランス等の薬剤関連課題を大規模データで抽出・評価する。今後はリスク層への個別介入策やICT活用の遠隔支援モデル開発につなげ、在宅での安全な薬物療法実現に寄与する。
在宅医療を担う薬剤師教育プログラムの開発
◎実施組織
・岡山大学薬学部地域創生在宅薬学講座:統括・実務実施
・岡山大学病院薬剤部:研究デザインの検討
・アイ薬局:実証協力・地域連携強化
超高齢社会の進展とともに、住み慣れた自宅で医療・ケアを受ける在宅医療の重要性が増している。在宅医療では、薬剤師が多職種と連携し、服薬管理や生活支援、患者・家族とのコミュニケーションなど幅広い専門性を求められる。しかし、現行の薬剤師教育では、在宅現場で必要な実践的知識や技能の習得機会が十分とは言えず、体系的な教育プログラムの整備が急務である。
本研究は、現場の多様な課題に即応できる薬剤師を育成するための教育プログラムを開発し、在宅医療の質向上と地域医療体制の強化に寄与することを目的とする。
1.Virtual Reality (VR)を活用した在宅医療を担う薬剤師教育プログラムの開発
将来展望:
VRを活用した体験型学習により、訪問時の状況判断や多職種協働の疑似体験が可能となる。今後は現場に近い実践学習を重ね、全国の薬剤師のスキル標準化や、遠隔地・未経験者への教育機会拡大につなげ、高度な在宅医療薬剤師の育成モデル構築を目指す。